ASUKAモデル

日付 平成26年7月31日
会長 由見 真治朗

6月に大分中央消防署で行われた普通救命講習へ行きました。なかなか行く機会がありませんでしたが、今年4月にNHKで放送された「AED迷わず使う」という特集を見たことがきっかけで受講しました。

心臓が原因で亡くなる方は、毎年6万人から7万人もおり、一日に180人以上が亡くなっています。心臓突然死とは、心臓が何らかの原因で突然動かなくなり、そのまま死亡してしまうことですが、心不全、心筋梗塞、狭心症などがその原因です。ほとんどの場合、予兆もなく突然訪れ、苦しいと思う間もなく意識を失い多くは1時間以内に死亡してしまいます。いずれの病因でも、心臓が完全に止まる前にわずかにけいれんしたようになることがあり、この状態を心室細動といい、そのままでは数分で心停止に至ります。AEDが有効なのは、この心室細動状態の時で、1分以内にAEDで除細動を行えば救命の確率は90%、3分以内では70%ですが、5分後では50%にまで下がってしまいます。

平成23年9月29日、さいたま市の小学6年生、桐田明日香さんが、駅伝の課外練習中に倒れ、翌日に亡くなるという大変悲しい事故が起きました。明日香さんは、1,000メートルを走り終えた直後に倒れましたが、けいれんを起こし、呼びかけにも反応がありません。教師たちは保健室へ運び、名前を呼び続けますがやはり反応はありません。保健室にはAEDが設置されていましたが、最後まで使われることはありませんでした。

明日香さんが倒れた当初、指導をしていた教師たちは「脈がある」「呼吸がある」と捉え、心肺蘇生法やAEDの装着を実施しませんでした。約11分後に救急車が到着した時には心肺停止状態となっていたことから、対応が適切であったか、また緊急時の危機管理体制が十分であったかが検証課題となりました。

AEDを使っていれば救われた命だったかもしれないのに、何故、AEDは使われなかったのでしょうか。事故の報告書では、明日香さんが倒れた後、苦しそうに呼吸をしている様子を複数の教師が見ていましたが、この時に迷わずAEDを使うべきだったのです。

NHKが行った世論調査では、誰かが突然倒れた場合にAEDを使うことが「出来ない」と答えた人は53%と半数以上に上りました。その理由としては、「使い方がわからない」が53%、「使うべき状態かわからない」が22%と自分は使えないと思い込んでいる人が多いことがわかります。

今回の事故を受け、さいたま市の教育委員会は、学校で起こり得る様々な危機事案に対する組織的、実践的な危機管理の基本的なあり方を示し、危機管理対応マニュアルを作成しました。また、教員研修の充実や、中学生以上の保健体育の時間にAEDの使用を含む心肺蘇生法の実習を導入しました。この教員研修のためにわかりやすいテキストを作成しましたが、そのテキストには「ASUKAモデル」という愛称が付けられています。

この「ASUKAモデル」では、重大事故が発生した場合、医療機関へ引き継ぐまでの対応訓練やAEDの使用法、心肺蘇生法の研修を全教員が実施すること、3年に一度は普通救命講習を受講することなど、教員の危機管理に対する意識や資質の向上を図っています。

そして、この「ASUKAモデル」最大のポイントは、倒れた人の意識や呼吸が「わからない」場合でも、すぐに心臓マッサージを行い、AEDを迷わず使うように強調していることです。「わからない」場合はとにかく次に進むことが大事で、「わからない」から何もしないでは、助かる命も助からなくなるのです。

誰かが倒れたら、まずは声を掛け、反応が無ければとにかく119番通報とAEDを手配します。心停止ではないか、最悪の可能性を思い浮かべることが初めの一歩です。心停止の場合であれば1分遅れれば助かる可能性が10%下がるので、救急車が到着するまでに呼吸を確認し、呼吸が無いか苦しそうな呼吸であれば、心臓マッサージを行い、AEDが届いたら即座に使用します。このAEDですが、電気ショックを与える「治療器具」であると同時に、ショックが必要かどうかを判断してくれる「診断器具」でもあるのです。電源を入れ音声の指示に従い、右胸と左わき腹に直接パッドを取り付ければ、自動的に除細動が必要かを解析し、必要であれば電気ショックを与え、必要でなければ「必要ありません」と教えてくれます。

目の前で倒れた人は、あなたにとっては他人でも、誰かにとって大切な人なのです。あなたの行動が、誰かの大切な人の命を救うのであれば、もしもの時は、迷わず1分でも、1秒でも早くAEDを使って下さい。それが明日香さんの母親、寿子さんの願いなのです。