お金の話

例会日 2019/05/16
卓話者 日本銀行大分支店長 森 毅 様

日本銀行は「物価の安定」と「金融システムの安定」を目的としている。この目的を達成するため、「発券銀行」、「銀行の銀行」、「政府の銀行」としての業務など様々な業務を行っている。大分のロータリークラブの一員として職業奉仕の精神に立ち、地域経済の活性化に向けた取組みを大分支店でも継続していきたい。

キャッシュレス決済の話題が近年多く聞かれるが、現状、全国における銀行券流通動向をみると、銀行券流通高が2016年末に初めて100兆円を超え、昨年末には110兆円を超えるなど、残高が増え続けているのが実情である。

一般に銀行券の取引需要は経済規模に応じて増加する関係性にあるとされる。実際、1990年代半ばまでは各年度の銀行券流通高の対名目GDP比率が8%前後で推移していたが、その後は上昇基調が続き、直近では20%前後になっている。低金利の環境のもと、預金の代わりに現金で保有することの機会費用が非常に小さくなっているため、取引需要よりもむしろ価値保蔵需要として、現金が多く保有されている可能性がある。

日本のキャッシュレス決済比率は世界的にみて低水準にある。韓国、英国が特に高く、次いでシンガポール、カナダなどが高い。日本でキャッシュレス決済が普及しづらい背景の一つとして、現金の偽造発生が少ないとの指摘がしばしば聞かれるが、確かに日本の銀行券の偽造券発見割合は欧米諸国に比べると大幅に低い。さらに、4月9日、財務省では、偽造抵抗力の強化などを図る観点から、2024年度上期を目途に日本銀行券の改刷を、2021年度上期を目途に500円貨の改鋳を、それぞれ行うことを決定し、公表した。日本銀行としても、今後、財務省等と連携しながら準備を進めてまいりたい。

日本国内の都道府県別にキャッシュレス決済比率を比較した網羅的な統計は限られているが、例えば小売業販売額に占める電子マネー・クレジットカード決済比率でみると大分県は下位3分の1の集団に入る。3大都市圏の都道府県で比率が高いが、このほかに香川県や三重県でも自治体や商店街の取組みなどもあって上位に入っている。

キャッシュレス決済は、今後、国際的なスポーツイベントが相次ぐ中で、インバウンド需要を取り込むうえで大きな鍵となる。また、現金決済に関わる様々なコスト(現金の製造・流通、ATM設置・維持、レジ締め作業等)を削減できる可能性もあると言われている。