睡眠と健康

日付 2017/02/16
卓話者 大分大学医学部公衆衛生・疫学講座 教授 兼板佳孝様

睡眠の問題が、食事、喫煙、飲酒などの他の生活習慣と同様に、生活習慣病やメタボリックシンドロームの発症を促進することが明らかにされつつあります。また、睡眠の問題は、うつ病などの精神疾患の発症も促進することが明らかにされています。さらに、睡眠の問題は日中に強い眠気や集中力の低下をきたし、産業事故や交通事故の発生も誘発します。そのため、睡眠の問題は、広く現代社会に影響を及ぼすものと理解されており、とりわけ、日本人は欧米人に比べて睡眠時間が短いことや、日本人の睡眠時間が短縮傾向にあることもあって、極めて重要な社会的課題と認識されています。
日本人の平均睡眠時間については、総務省の社会生活基本調査から、男性で7時間49分、女性で7時間36分と報告されています。この調査では幾つかの興味深い所見が認められており、第一には、女性の方が男性に比べて、睡眠時間が短いことが挙げられます。古くから男性優位な日本の社会におきましては、男性と女性の社会的な役割の違いが睡眠時間の違いをもたらしているものと推測されます。第二の所見としては、男女共通して、40歳代後半が最も睡眠時間が短いことが挙げられます。若年から40歳代後半にかけては、徐々に睡眠時間が短くなり、この年齢階級を過ぎると、今度は高齢になるにつれて、睡眠時間は徐々に長くなります。40歳代後半という年齢は、仕事においても、また、家庭においても然るべき役割が期待され、その結果、多忙な日常生活において、睡眠時間が削られやすくなっているものと思われます。
睡眠に関する健康づくり運動を進めるために、厚生労働省は2014年3月に「健康づくりのための睡眠指針2014(睡眠12箇条)」を発表しましたが、私も委員の一人として指針の策定に参加致しました。この指針では、①科学的根拠に基づいたものとすること、②ライフステージやライフスタイルに配慮すること、③生活習慣病・こころの健康に関する記載を充実することなどが重視されました。今後は地域、職域、学校などの健康づくりや保健指導の現場において、指針が活用されることが期待されています。