卓話の時間(10月13日)

日付 2016/10/13
卓話者 日本航空 大分支店 支店長 岩田 俊昭様

いつも日本航空をご利用いただきまして誠にありがとうございます。また本日は、卓話にお招きいただきましてありがとうございます。本日は日本航空が経営破綻してから再生に至る現在までの経緯について、自分自身の体験も踏まえお話しさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

まず自己紹介ですが、昭和41年11月、東京都板橋区生まれの49歳です。学生時代はラグビーに打ち込んでいました。平成元年3月に立教大学社会学部を卒業し、4月から日本エアシステム(旧:東亜国内航空)に入社し、それ以来、営業畑を歩んで参りました。入社してからの一回目の大きなターニングポイントは2002年10月のJAL/JAS経営統合です。二回目のターニングポイントが2010年1月の日本航空経営破綻になります。そして2013年5月より現職です。

2010年1月19日、日本航空は東京地方裁判所に会社更生法の適用を申請し、経営破綻しました。企業再生支援機構が日本航空の支援を決定し、2月20日、日航株が上場廃止しました。負債総額2兆3,200億円、金融を除く事業会社では過去最大の経営破綻となりました。債務超過8,700億円、企業再生支援機構から3,000億円、日本政策投資銀行からの公的資金を合わせ、なんとか事業を継続する事ができました。

経営破綻の原因は、外的要因である、SARSや新型インフルエンザの流行による旅行者減少、ヨーロッパの火山噴火による飛行機の欠航、リーマンショックによる経済の停滞、燃油価格高騰による費用の増加、羽田/成田空港発着枠の慢性的な不足による不経済なジャンボ機の大量保有、公共交通機関としての不採算路線の維持などがあったと思います。また内的要因として、半官半民の親方日の丸体質、硬直化した縦割り組織、組織の肥大化、高コスト体質、採算意識の欠如などがあげられます。

経営破綻後に大きく分けて三つの取組みがありました。「大リストラ」「社員の意識改革」「部門別採算制度の導入」です。
まず「大リストラ」ですが、大きく分けて二つあります。一つ目は「機材の小型化と機種の統一化を図り不採算路線からの撤退」です。大型機はジャンボ機(B747)を退役しB777に統一。中型機はA300を退役しB767に統一。小型機はMD90を退役しB737に統一。そして例えばヨーロッパ線は、ロンドン線、パリ線、フランクフルト線の3路線に集約、アメリカ線は、サンフランシスコ線、ロサンゼルス線、ニューヨーク線、シカゴ線の4路線に集約し、アムステルダム線やミラノ線、サンパウロ線など不採算路線は撤退しました。二つ目は人事賃金制度の変更です。人員体制は、JALホテルズなど関連会社の売却を含め、特別早期退職制度により日本航空グループで48,000人いた社員を32,000人にまで削減しました。またOB/OGの年金制度も改定し、全社員の賃金制度も見直しました。大分では、支店と空港所を合わせ、破綻前に69人いた社員が現在では42人にまで減員しました。実感として日常業務はとても忙しくなりましたが、一人一人の社員が自分自身の能力を最大限に発揮できるようになりました。

次に「社員の意識改革」です。稲盛和夫さんに来ていただいて全てが変りました。

当時の日本航空は経営状態も、また社風も非常に悪くなっており、世間からは二次破綻も必至とささやかれていました。とても稲盛さんに日本航空に来ていただける状態ではありませんでしたので、稲盛さんに来ていただけると聞いた時、私自身は強い気持ちの昂ぶりを感じました。

引き受けていただいた理由は三つあります。

一つ目は日本経済への影響です。日本航空が二次破綻でもすれば、日本経済に多大な影響を与えるだけでなく、日本国民までが自信を失ってしまいかねない。一方で、再建を成功させれば、日本航空でさえ再建できたのだから、日本経済が再生できないわけがないと、国民が勇気を奮い起こす可能性があるからです。
二つ目は日本航空に残された社員たちの雇用を守る事です。
三つ目は国民のため飛行機を利用する人たちの便宜を計る事です。もしも日本航空が二次破綻すれば、日本の大手航空会社は1社だけになってしまい、競争の原理が働かなくなり、運賃は高止まりして、サービスも悪化してしまう可能性があります。健全で公正な競争条件のもと、複数の航空会社が切磋琢磨してこそ、利用者により安価でより良いサービスが提供できるからです。

そして稲盛さんにいただいたのは、フィロソフィ(哲学)です。稲盛さんが京セラを立ち上げてから、苦労して築かれてきた経営哲学であり、会社人である前に、人間として生きるための指針とも言えるとてもベーシックな内容です。日本航空では80項目ある京セラフィロソフィを、その半分の40項目にしてJALフィロソフィとしてまとめました。

日本航空グループ社員はこのJALフィロソフィを繰り返し学んでいます。
リーダーフォローアップ勉強会、職場のリーダーが毎年2回、東京で実施する勉強会に参加します。そして職場で毎週1回、フィロソフィ勉強会を実施します。その他に、日本航空の各地の支店長は、地元の盛和塾に入塾し学びを深め、社内にフィードバックします。

「人間として何が正しいかで判断する」「感謝の気持ちを持つ」「売上を最大に、経費を最小に」など、あたりまえのことばかりですが、しかし実行する事はとても大変な事だということが実感としてわかりました。日本航空も経営破綻してから6年10か月の時が経過しましたが、もう一度「常に謙虚に素直な心で」を肝に銘じ、破綻した時にご迷惑をお掛けした方々、お世話になった方々への感謝の気持ちを常に忘れずに仕事に邁進していきたいと思います。

そして稲盛さんにいただいた「部門別採算制度の導入」です。
やはり稲盛さんが、京セラを立ち上げてから、苦労して築かれてきた制度です。会社が大きくなるにつれて、製造も営業も経理も全てを稲盛さんが一人でやっていく事は無理になってきて、自分自身の分身に各部門を任せようとして作り上げた制度と伺っています。この制度で各部門の部門長は、任された自分自身の組織を経営者感覚を持って運営していくことになり、マネージメント能力を鍛える事になります。フィロソフィをベースにした部門別採算制度によって、各部門が目標とする営業利益を達成し、その集大成が会社全体の営業利益になります。
実に上手くできた制度です。日本航空でも部門別採算制度が定着してきました。一番大事なことは目標設定だと思います。試行錯誤し少しずつ改善しながら取組んでいます。

最後にご紹介させていただくのが稲盛さんにいただいたJALグループ企業理念です。
JALグループは全社員の物心両面の幸福を追求し、
一、 お客様に最高のサービスを提供します。
一、 企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。

私達はこの企業理念の実現に向け、たゆまず努力をしていきます。そして、世の為、人の為、利他の心を持って、これからもしっかりと歩んでいきたいと思います。