ポリオの撲滅

日付 平成26年11月13日
会長 由見 真治朗

11月はロータリー財団月間です。そこで今日はロータリーの優先活動であるポリオの撲滅について話をさせていただきます。

以前、ロン・バートンRI会長は、ポリオ撲滅について「ゴールまで長いレースでしたが、ゴールは目の前です。しかし、私たちが進み続けなければ、そのゴールテープを切ることができません。そして、世界中のあらゆる地域にいる一人ひとりのロータリアンの支援があって初めて達成されます」とメッセージを送りました。

皆さんもご存じのとおり、ポリオは人間だけが感染する病気で治療法がなく、ワクチンが絶大な予防効果を発揮します。1988年にはポリオの常駐国は125か国あり、35万人の患者がいましたが、世界中で25億人を超える子供達がワクチンを接種し、今ではその1%に満たないまで減少し、感染が持続している常駐国は、アフガニスタン、ナイジェリア、パキスタンの3カ国となりました。

日本でも1960年にポリオ患者が5,000人を超え、かつてない大流行となりましたが、ポリオ生ワクチンの導入により流行は収まり、1980年の1例を最後に現在までポリオウイルスによる新たな患者は発生していません。また、アメリカでも1940年から1950年代にかけて大流行しましたが、ワクチンの接種運動が功を奏し、1979年以降は発生していません。

ポリオの撲滅が宣言されたのは、1994年に北米、中米、南米地域、2000年には西太平洋地域で京都宣言として発表され、2002年にはヨーロッパ地域でも撲滅宣言が出され、確実にポリオ撲滅に向けて「あと少し」のところまで来ていました。

ところが、2013年に一旦はポリオが制圧されていたソマリア、ケニア、シリアで再び感染が報告され、イスラエルでも下水のサンプルからポリオウイルスが検出されました。また、今年5月には、パキスタンやカメルーンでも感染が拡大しているとしてWHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、RIもこれを支持しました。現在では、10カ国で感染が拡大しており、国境を越えた感染も確認されていますが、感染力が強く今後は野焼きの野火のように広がる可能性があるといいます。

ポリオの世界的な撲滅の達成にあたって最も大きな障害は資金不足ですが、ロータリーは、3-Hプログラムの設立、ポリオプラス計画、そして、2005年にはロータリーの100周年を記念して「約束を守ろう、ポリオをなくそう」を合言葉にポリオ撲滅募金キャンペーンを開始し、2013年までに総額12億ドルもの寄付金をポリオ感染国での予防接種活動に充てています。ロータリアンは寄付金を集めるだけでなく、道路もないような奥地や紛争地帯へ赴き、実際にワクチンを届ける活動もしていますが、紛争地帯では双方の代表者を説得し、ワクチン接種のために一時休戦したり、宗教上の理由からワクチンの投与を拒む人々を説得したりと様々な活動をしています。ポリオ撲滅のための手段がワクチンの接種であることは分かっていますが、難しいのは年齢を問わず、ワクチンの接種を受けていない人たちを特定し、接種を受けさせる点にあります。また、ワクチンを接種しようとしても、武力紛争や政情不安を始めとする複雑な地政学的状況が、ワクチンの接種を危険で困難なものにしています。部外者に対する不信も大きな障害となり、ナイジェリアやパキスタンでは、ワクチンの接種に従事する人々を意図的に狙った事件も発生し、紛争や事件に巻き込まれ亡くなったロータリアンもいます。

いま世界的にポリオの感染が拡大していますが、ウイルスが生存し、感染者が移動する限り、感染の再発生は今後も続く可能性があります。日本では、抗体を持つ人が多くいるので今のところ大流行することは考えられませんが、一部には抗体保有率の低い年代もおり、ポリオウイルスが持ち込まれれば流行の可能性はあります。ポリオの感染拡大は、決して対岸の火事ではないということを認識することが重要だと思います。